パーマンになれなかった日

最近、「妖怪人間ベム」のサイトを見つけてしまった。ふと思い出して Yahoo!JAPAN で検索したのだ。子供の頃、よくテレビで観ていた。とっても好きだった。夕方4時からの放送だったが、何だか恐くて、いとこと一緒でないと観られなかった気もする・・・。

恐い、なんて言いつつも、実際僕は妖怪人間に憧れた。突然消えて瞬間移動が出来ることも羨ましかったし、武器を持ってることも羨ましかったし、妖怪であることも羨ましかったし、3本指であることも何だか切なくて羨ましかったし、何もかもが羨ましかった。彼らは「悪」と戦い、人間に憧れ、「早く人間になりたい」と願いつつも、人間には恐れられてしまう、という切ない運命を背負っていた。にも関わらず、僕は「妖怪になりたい」と切に思っていた。人生ってなんてうらはら・・・。

妖怪人間になって、ベム・ベラ・ベロの仲間入りをしたかった。さしずめ「妖怪人間コウ」。僕はてっきり、彼らは親子なのかと思っていたら、実は親子ではないことがサイトで分かった。・・・でも、やっぱり夜に一人であのサイトは見ないことにしよう。

子供ながらに、アニメに出てくるものはいろいろと憧れるものだ。ドラえもんのポケットが欲しかったり、忍者になりたかったり、魔法を使ってみたかったり、はたまた「あんぱんマン」の顔を食べてみたかったり。「妖怪人間になりたい」と思う子供はあまりいないだろうけど・・・。

ある日、父が「パーマン・セット」を買って来てくれた。多分、あれはどこかに出張に行った時のお土産だったのだろう。僕は物凄く嬉しかった。興奮した。あの憧れのパーマンになれるのである!!! ヘルメットやマント、そしてバッチ。これら全てを身に付ければ、僕もパーマンになって空を飛べると思っていた。真剣に思った。はやる気持ちを押さえながら、母に手伝ってもらってマントを着る。ヘルメットをかぶる。バッチもつける。そして、いざ!!! 憧れの空中浮遊!!!

・・・ところが、宙には浮かなかった。空など飛べもしなかった。不思議でならなかった。何故、マントを付けてパーマンと同じ格好をしてるのに、空を飛べないんだろう・・・。どんなに加速をつけて、いくら力強くジャンプしてもすぐに着地してしまう。心底不思議だった。悲しかった。裏切られたような気分だった。そして両親は「飛べるわけないじゃない」と笑っていた。

アニメの世界は、所詮「非現実」の世界であるということを、僕はあの「パーマン・セット」によって初めて気づかされた。マントさえ付ければ空を飛べると、何の疑いもなく思っていた子供時代。「妖怪人間」になってベム・ベラ・ベロの仲間入りが出来ると思っていた子供時代。アニメの中に出てくる品物が欲しくて、よく両親にねだるその度に、勿論のこと「そんなのは売ってない」と言われるのだが、パーマンになれなかったその現実が何よりも衝撃的だった。


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過ぎ去りし日々のおかしな回想

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