「母をたずねて三千里」をたずねて…10年越しの想い
第2話

遂に、電車がサン・マロに着く。まだドラマで観た風景を見ないうちから、「カンド〜〜!!」と大はしゃぎの僕。でも、あの風景を探しに来たのだから、とにかく歩き回って探さねばならん。ところが、海岸沿いを歩いても歩いても、記憶の中の風景に出合えない。「おかしい・・・そんなはずはない・・・」と諦めることを知らない僕に付き合ってくれる友人も健気である。「ふみ姉(檀ふみさんのこと)に会わなきゃ!ふみ姉、待っててねぇ〜!!」とアホみたいに繰り返し言う僕に、ノッてくれる友人。そうそういないもんだ。歩きながら、あのドラマの話をたっぷりとする。出来ればいつかは、あのドラマをもう一度観たい、けれどビデオ化はされていない、どうすればいいの・・・この気持ち。

一日中歩き回ったが、それでも見つからなかった。小さな町なので、くまなく見て回るのにさほど時間はかからないが、もしかして、あのドラマの舞台はサン・マロではないんだろうか・・・と弱気になってくる。帰りの電車の時間も近い。そろそろ駅に向わねば・・・と思っていたその時、なんとなく「ここじゃないかな・・・」と思うところに居た。右手に海、左手に道路と建物。確かそんな感じではあった。あれ、でも、こんなに騒がしい道ではなかったけどなぁ・・・と妙に交通量の多い道路に疑問を抱きつつも、「ここだ!!」と信じることにした。「そう、きっとここだ。ドラマだから車はきっと通行止めにしたんだ!!ここだ!!!やっと来たんだ!!!やっと会えた!!!」と、僕は感激の涙を流した。なんせ10年越しの想いである!!!ワーワーワー!!!・・・さすがの友人もここまで一緒にはノッてくれない。側で笑っているだけである。とにかく、僕は感激の気持ちを声に出して表した。もう、思い残すことなく、帰国出来る・・・。ありがとう、フランス!ありがとう、サン・マロ!!1999年の夏。

第3話につづく。


異国にて…

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