北欧・夢紀行
〜フィンランド Vol. 1〜

1999年8月4日(水)。体を揺さぶられてハッと目が覚めた。同室だった他の3名の姿はもうなく、掃除のおばさんがいるだけ。時計を見るとまだ到着予定時刻よりも1時間早い・・・と、そこで気が付いた。フィンランドはスウェーデンよりも1時間進んでいるのだった!!僕は大慌てで支度をし、出口に向かった。半年前にモロッコで知り合ったフィンランド人ミカエルが迎えに来てくれているはずだが、まさか、僕が降りて来ないからと帰ったりはしていないだろうか?と不安になりながら船を降りると、そこにはミカエルが待っていた!
「来ないのかと思ったよ!」

やっとの思いのフィンランド!!!車の中から窓の外を眺めながら、信じられない思いと高揚感で一杯だった。ここトゥルクは公用語がスウェーデン語とフィンランド語の2ヶ国語で、町自体もスウェーデンの影響を多く受けていると言うが、それでもやはりスウェーデンとはまた違う雰囲気だ。市内をぐるりと回った後、朝食を食べ、ミカエルの職場である大学に行き、その隣にある学生寮に荷物を置いた。夏の間はサマーホテルとして一般向けに開放されている。ミカエルの家が今改装中ということで、わざわざ予約をしてくれていたのだった。その改装中の家を見せたいということで、連れて行ってもらった。改装中とはいえ、そこでミカエルは奥さんと2人で生活をしている。フィンランドらしく森の中にあるその家は、とても素敵だった。
「今度完成した時に来て、是非家に泊まっていって」

近くにある海まで散歩をし、今度はカレリア式の建物(レストランになっていた)を見て、車で昼食を摂るレストランに連れて行ってくれた。「Angel Restaurant」と言い、その名の通り、店内は天使の飾りで一杯だった。昼食後は、手工芸野外博物館へ。ミカエルは仕事場に戻り、1時間後に迎えに来てくれるということで、僕ひとりで見学。ストックホルムのスカンセンみたいな感じだが、それに比べると小振りだ。その昔、トゥルクで大火事があったが、この博物館だけは奇跡的に焼けずに残ったのだとか。昔の生活ぶりを再現していて、屋根の瓦などは日本のそれと随分似ていて驚いた。家の中で靴を脱いだりと、日本との共通点を発見することが嬉しい。とっても穏やかなところで、のんびりと野外博物館を見学しながら、幸せな気分に浸っていた。

その後、ミカエルの奥さんを迎えに行き、僕の希望でナーンタリへ。ここにはあのムーミンの村を再現したムーミン谷がある。アニメを再現したテーマパークに行くのは初めてだったので、少し興奮した。

車の中からとても美しいモデルハウス(今は人が住んでいる)が見えた。中を覗いてみたい・・・もしかしたら、あの中には、僕が小さい頃に思い描いた風景があるのではないだろうか?と想像した。

それからトゥルクに戻り、シベリウス博物館へ。僕は「フィンランディア」しか知らないが、この国を代表する大作曲家で数々の名曲を残している。ピアノとオーケストラのCDを購入。本当はコーラスのCDが欲しかったのだが、残念ながら置いていなかった。
「欲しかったら、別のところで買って送ってあげるよ」と、ミカエルが言ってくれて感激。

夕飯には僕の希望でトナカイの肉を食べさせてくれるレストランへ。初めて食べるトナカイの肉は、確かにどことなく癖があったが、嫌いではなかった。フィンランドでも北の方に住む人たちがよく食べるということで、ミカエル夫妻は別のものを食べていた。

フィンランドでの1日が終わった。ミカエルは大学の教員をしていて、いくら夏休みだとは言え仕事があるはずなのに、僕の観光に1日中付き合ってくれた。しかも、食事から何から全て支払いをしてくれて・・・。“フィンランドにいる”というだけで満たされて幸せな気分なのに、こんなにも親切にもてなされ感激で一杯だった。

ただ、とんでもない失態を犯してしまった!寮の部屋で、カメラのフィルムが全部終わっていないというのに、僕はなぜかフィルムのフタを開けてしまったのだ。この中にはフィンランドで写した大切な写真が収まっているのだ!!僕は大慌てで電気をつけずにトイレに入り、真っ暗闇の中、フィルムを手動で巻き戻した。写真がどんな状態になっているのか、不安でたまらなかった。

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異国にて…

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