
| 「母をたずねて三千里」をたずねて…10年越しの想い 最終話 |
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あれから3年が経った春。僕は再びフランスに来ていた。今回は2週間程の旅行だ。パリの友人のところに泊めてもらい、ブザンソンや南仏などを旅行する予定だった。フランス滞在はほんの10日ほどなのにも関わらず、僕はかなり欲張ったスケジュールを組んだ。今度いつ来られるか分からない・・・と思い、オンフルールを行程に入れた。今度こそ、思い残すことない旅をしたい。そう思い、パリ→ブザンソン(中東部)→ニース(南)→パリ経由でオンフルール(西海岸)→パリ、というフランスを知っている者であれば、誰もが目を丸くするような強行スケジュールだ。その後は、コペンハーゲンが待っている。友人は「疲れそう〜・・・」と心配顔だ。「確かにキツイよね。やっぱりオンフルールは今回やめようかな・・・」と言うと、「え〜!!勿体無い!」と励まされ(?)、結局僕は、行きたいところ全部行くことにする。
今回のフランス旅程は、オンフルール以外は全て行ったことのある町ばかりだ。ブザンソンは留学していた町だし、ニースも馴染み深い(カンヌに1ヶ月間滞在していた時はしょっちゅうニースに行ったし、ブザンソン留学中も南仏旅行に行っている)。よって、今回ニースでは観光していない。前回香水好きの友人と、香水で有名なグラースに行った際、香水を作らずに帰ってきた後悔と、最近日本で見たグラースが舞台のドラマに影響され、どうしてもグラースに行きたい!ということになり行って来た。ドラマで使われた場所や、香水工場にも行き満足満足。翌日、友人はニースを観光し、僕は街中をブラブラし映画を見た。「ニースまで来て観光しないなんて!」と言われたが、確かにごもっともである。 夜、僕はひとり夜行列車でニースを発ち、朝、パリに着く。そこで別の友人と落ち合い、オンフルール行きの電車に乗る。鈍行を乗り継ぎ、そしてバスに乗って行かねばならぬところだ。一体どんな町なんだ!と思いながら降りてみると、なんとまぁ。白人ばかりだ。多民族が暮らすフランスにおいて白人しかいない、ということは、そういうことである。つまり、オタカイ町?お金持ちのバカンス地のようであった。ふんふん、と納得しながら町を散策。ここは港町で、沢山の画家達が美しい港を描きにやって来る。そして僕は、「母をたずねて三千里」をたずねに来た。サン・マロよりも小さな町なので、あの想い出の海岸シーンを見つけるには難しくなさそうだ。 手っ取り早いかと思い、観光客目当ての観光船に乗ってみる。しかしこれが、ただそこまで行って帰ってくるだけのボッタクリとも思えてしまう、つまらない船であった。ホテルの人に地図を貰い、ドラマの話をしたところ、そんなドラマの撮影があったことは知らない、とのこと。海岸の場所を教えてもらい、出向いてみるも、記憶の中の風景とは全く違う。翌日、地図を見ながら、別方向に歩いてみる。しかし、歩いても歩いても辿り着かない。徒歩では無理なのでは?という疑問と、予感としてこっちの方には本当に海があるの?という疑惑が起こり、結局断念。そう、あの風景に出合うことはとうとうなかった。なかったけれど、オンフルールという町に行ってよかったと思う。町自体が綺麗で、滞在してみてすごく気分良く過ごせたということと、あの海岸線には行けなかったのにも関わらず、何とも充実感があったのだ。実際ノルマンディー地方にはあまり行ったことがないので、新鮮味があったとも言えるのだが。 とは言うものの、やはりいつかはあの海岸線に行ってみたい。もしかしたら、あのドラマの舞台はオンフルールではあったけど、撮影は隣町だったかも知れない。徒歩では行けないようなところでロケをしたのかも知れない。それは実際、当時のスタッフに聞くなり、ビデオを入手してもう一度見てみるしか方法はない。でも、いつか辿り着けるような気がする。 フィンランドにしてもそうだ。僕が幼い頃から思い描いている風景に、前回行った時は出合えなかったが、いつか出合える気がする。僕と深く繋がっている国には、何らかの「思い残し」がある。フランスの場合、何度も行っているが、毎回「思い残す」ものがある。わざと「思い残す」ようにする場合もあるのだが、必然的にそうなってしまうことの方が多い。でも、その方が、いつまでも繋がっていく感じで、ちょっと裏腹ではあるが、嬉しいような気もする。 結局まだまだ「母をたずねて三千里」をたずね続けねばならぬらしい。 完。 |