第59話
シャンパーニュ地方へ

3月19日(金)。ロータリー財団奨学生の為の小旅行でシャンパーニュ地方へ。2泊3日で、なんと参加者が負担するのは現地までの交通費のみというスゴイ待遇。宿泊費(ホームステイ)も食費も見学費も全てロータリー負担なのだ。この機会を逃す手はない。

夕方に現地集合なのだが、シャンパーニュ地方ランスまではパリ経由なので、朝のTGVに乗って少しパリで遊んでから行こうと思い、6時起床を予定していたのに、大幅に寝坊!目覚ましに気がつかず。いつもなら駅まで徒歩で行くのに、バスに飛び乗った。こんな時に限って全部赤信号にひっかかる。駅に着き、バスを降りて走り、ホームに足を踏み入れたところで虚しくも列車は発車・・・。言い様のない苛立ち。駅員と目が合った。「次の電車は・・・」と、僕に教えてくれようとしていたのに、無情な僕は無視して窓口に向かった。駅員が悪いわけでもないのに!焦っている僕は、“(電車を)逃す”を意味する俗語しか出てこなくて、ちゃんとしたフランス語単語がどうしても思い出せず、仕方なしに俗語を使ってしまった。すぐに直してくれたが。正式な単語ではなく、俗語を覚えるのが趣味だったツケはこういう時にやってくる。追加料金116フラン(約2,400円)を払い、次のTGVの切符を買った。

さて、シャンパーニュ地方はその名の通り、シャンパーニュ(シャンパン)の産地である。ここで作られるものしか「シャンパン(シャンパーニュ)」という名前を使えない(他で作られたものは、スパークリング・ワインと言わなければならない)。産地だけあって、きっとワインよりもシャンパンに誇りを持って、何かとシャンパンなのだろうということは想像に難くなかった。

2泊させてもらうホスト・ファミリー宅には、お父さん、お母さん、そして僕と同年代の息子がいた。お父さんは歴史の教授。シャンパーニュ地方の中心都市ランスといえば、ノートルダム大聖堂が有名だが、その大聖堂にまつわる本も出版しているという。しかし、僕のあまりの知識のなさに、そういったアカデミックな方面での話は弾まず。今回の旅行に参加している他の日本人で、歴史を専攻している人がいて、しきりに僕を羨ましがっていたが、僕としても代わってあげられたら双方共に嬉しかっただろうに・・・と思った。

3月20日(土)。シャンパンが造られているメルシエの酒蔵庫を見学。当然のことながらツーリスティック(観光客向け)。試飲も出来た。僕はシャンパンは買わずに、アーミーナイフを購入。

この旅行には世界各国から集まってきているロータリー財団留学生たちが参加しているので、まさにインターナショナルな団体。昨日のレセプションで僕の隣にいた男が、妙なフランス語を話していたので「なんでこの人、わざとらしく変なフランス語を話すんだろう」と気になっていたのだが、今日の昼食時に話してみたら、なんとカナダのケベックから来たのだそうだ。ケベックのフランス語に触れるのが初めての僕は大興奮!フランスのフランス語とケベックのフランス語の違いには凄く興味津々なのだ。カナダ人に囲まれた昼食の間中、話題はそれに終始した。

午後はランス市の観光。ノートルダム大聖堂の中にあるシャガールの絵に感激。ガイドが歴史をふまえて街を歩きながら説明してくれるのだが、さすがにフランス語を聞く集中力もそう長くは続かない。第二次世界大戦でランスはドイツ軍に占領され、壊滅的な被害を受けたが、その後復興。ブザンソンとは勿論全く違う雰囲気で、白い建物が多くある(比較的新しめな)印象を受けた。

観光の後、夕方一旦ホームステイ先に戻り、その後、晩餐会へ。ホームステイ先の息子も来た。同じテーブルに座っていたのだが、途中から話すこともなくなり、「俗語教えて!」と言ったら、ニヤリと喜んだ。「何知ってんの?」と訊かれ、これまであらゆる人たちに教わった単語を口に出そうとしても、下ネタしか出てこない。ちょうど同じテーブルにいた年配の人たちは別の場所に移動していたので、思いついた俗語を披露した。すると、「よく知ってるじゃん!」と笑っていた。そして、若人だけが残ったテーブルでは俗語大会に。・・・会話に困ったら下ネタを。これは世界共通で意外と盛り上がるものである。

とても感じのいいアメリカ人がいて、フランスに来て初めてと言っていいほど、アメリカ人と長々と話した。彼は南仏エクス・アン・プロヴァンスの大学に通っている。大道芸っぽいことを得意としており、好奇心旺盛。視野も広く、典型的なアメリカ人ではなかったのでとても好感が持てた。南仏に来たら遊びにおいでよと言われ、連絡先を交換した。

韓国人女性には「ケイ・ウンスク」ネタを。もはやもう日本でしか活動していないウンスクさんではあるが、韓国でもまだ有名らしく、2人でウンスク話で大興奮。

晩餐会の終わりには、おじいちゃんとおばあちゃんが仲良くダンスをして、場内を沸かせていた。中学時代に知り合い、高校時代から付き合い始めて結婚。とても仲が良く、ロマンティックな2人だなぁと思った。いたれりつくせりの旅行に参加し、この美しいシャンパーニュ地方で、最後の夜はロマンティックに締めくくられた。

第60話につづく

フランス留学記目次