第12話
イライラ絶好調!

10月6日(火)。クロードと大家と共に、電気、電話、銀行口座の手続きをしに行く。銀行では噂通りの対応で、途方に暮れた。説明の嵐でちんぷんかんぷん。しかも、担当者はあまり感じが良くない。電話は取り付け日の日程が合わない。何とか今週中にしてもらえるよう、クロードが手を打つと言ってくれた。なんと心強いことか!対応の悪さ、責任転嫁、応用の利かなさは、これからイヤと言うほど味わうことになる。基本的に働くことが好きではない国民性であるゆえに、役所などの公共機関は勿論のこと、商売する気があるんだかないんだか分からないような対応に腹を立てたり、こっちがビックリするくらい無責任な発言に苛々することは日常茶飯事。だからといって、引き下がっては負けになる。何とかしたいのであれば、とにかく主張するのみ。その意味でも、語学力は自分の身を守る武器となる。言葉が出来ないというだけで見下されたり、放っておかれては溜まったものではない。生活していかなくてはならいのだから・・・。

この日は雨。朝からずっしりと気分が重くなった。部屋で穿くサンダルを買おうと思っても、いいのが見つからない。バスに乗って町の感覚を掴もうと、出かけてみるも、乗り場が分からずウロウロ。路線もゴチャゴチャしていて分かりづらい。おまけに、バスに乗れば乗ったで、次の停留所を知らせる車内アナウンスもなければ、停留所には名前の看板すら貼られていないところもある。要は、降りる停留所が乗ったところから何番目かを覚えておいて、乗った時からきちんと数えておかないといけないのだ。これは何もブザンソンに限ったことではない、ヨーロッパではよくあることだと知ってはいたのだが、ストラスブールはアナウンスのみならず、電光掲示板までもが車内にあったので、ブザンソンのバスが余計面倒に感じられたのだ。苛々が募る。

駅に行き、ポワチエ行きの電車時間を調べる。同じ大学のポン子が西フランスのポワチエに留学していて、これまた同じ大学のリンゴ(ブルターニュ地方のレンヌに留学)と共に遊びに行くことになっていたのだ。時刻表を貰い、その足で学校に行き、インターネットでメールチェックをする。が、ポン子からはメールが来ておらず不安になる。ポン子が住んでいる寮に電話するも掴まらず、せめて僕の部屋に電話が繋がれていれば、折り返してもらうことも出来るのに、電話がないのは不便!

同じ大学の先輩、メグミさんもちょうど同時期に、ブザンソンから電車で1時間のところにあるディジョン(ブルゴーニュ・ワインが有名)に留学していたので、何日か前から電話しているのだが掴まらない。こういう日は誰かと日本語で思いっきり話したい!朝から夜まで機嫌が悪く、「ブザンソン大嫌い!」と叫んでしまった。しきりにストラスブールが懐かしく、そして便利に感じられた。

夜、公衆電話からメグミさんに電話するとやっと掴まった。ロンドンに旅行に出ていたのだそうだ。僕はここぞとばかりに喋り捲り、一気にストレス発散!メグミさんは大笑いしながら、僕の鬱憤を聞いてくれた。

翌日。食器洗い機の修理に来てもらう。大家も来てくれたが、相変わらず訛りが強く、さっぱり理解出来ず。昨日に引き続き、苛々絶好調。まだテレビもなく、ラジカセもなく、無音の部屋。料理をする気にもなれない。クロードが持って来てくれた勉強机用のランプは、まるでベッドの横に置くようなランプで全然使えない。郵便受けを覗きに行くと、ポン子から手紙が来ていた。ストラスブールに引き続き、手紙の第一号はポン子だ。留学中、何が一番の楽しみかといえば、それはやはり手紙を受け取ることなのだ。学校に行き、メールをチェックするも、まだポン子からはきていない。今週末について確認したいのだが・・・。かと思いきや、一緒にポワチエに行くはずだったリンゴは「別の用事が出来たから、ポワチエには行かない」と言い出し、今週末の予定が狂ってどうしようかと思ったが、ひとりで行くことにした。

それにしても、銀行も電話もどうなっているんだろうか?!手続きが進まない。異国暮らしに一抹の不安を覚える。なんとかポワチエに行く前に終わらせたいのだが。更にイライラは続き、ロータリーが用意してくれていたブリティッシュ航空の往復券は、大阪−パリ間のものだったが、次シーズンから大阪便がなくなる為、成田行きに変更すると連絡がきた。なんてこったい!だったらJALとかエール・フランスにしてくれよ!と思ったが、お金を払っているのは僕ではなくロータリーなので、そんな主張が通るわけもなく・・・。

第13話につづく

フランス留学記目次