午後4時半。東京駅で成田エクスプレスに乗ろうとしていた正にその時、パリの友達アユミから電話がかかってきた。こんな時間に一体何の用だろう？！
「今から成田エクスプレスに乗るところなんだけど！」
少し長めの沈黙があった。国際電話だから？！
「・・・はっ？！」
「だから、今、成田エクスプレスに乗るところだよ！」
「・・・ナンデ、なんでまだ日本なの？」
「えっ？パリには土曜日の朝着くんだってば！」
「今こっち土曜日なんだけど」
「えええ？ちょっと待って、ちょっと待って、どういうこと？？」
「明日着くんじゃないの？」
「いやいや、パリには土曜日の朝着くんだよ！・・・そっち、今何時？」
「土曜日の朝9時だけど」
「えええっ？！一体どういうこと？？」
僕は頭が混乱していた。何が何だか分からない。僕はパリに土曜日の朝に着くはずなのに、今僕はまだ東京にいて、飛行機にも乗っておらず、しかもパリは今土曜日の朝9時らしい。
「やっぱり明日着くんじゃん！ちょっと、P（フランスに住んでいる共通の友達）に電話するから、切るよ」
もしかして、飛行機に乗るのは昨日だったんだろうか？相当僕は蒼ざめて、日程表を確認した。やはり乗るのは今日だ。間違っていない。ただ、よく見ると確かにパリに到着するのは明日、9日の朝になっているではないか！！！ヨーロッパに行く時は、大抵同日着だったので、今回もてっきり時差があるので同日着だとばかり思っていたのだ！でも日本を夜発ち、そこから乗り継ぎだのなんだので20時間近くかかるわけだから、同日着など、冷静に考えればあり得ない話。フランスにいるほかの友達にも、土曜日に着くからと言ってあり、Pも土曜日にパリに来てくれることになっていたのだ。なんたる大失態！！！
成田空港には5時半に着いた。超ギリギリもいいところ。通常、国際便に乗る時は2時間前には空港に行かなくてはならないが、僕が着いたのは1時間前。これはギリギリの時間ではあるが、間に合うことを知っていて、更には余計な待ち時間もないので実際のところは都合がいい。当然の如く、カウンターのお姐さんには「急いで下さい！」と言われるが。
香港行きの機内では、ひとり、こんなに美しい人がこの世にいるのか？！というようなスチュワーデスさんがいた。香港に着いて、2時間待ち。ふらり・ふらり。大きな空港で、移動にすこぶる時間がかかる。ひとり旅は、待ち時間もひとりなので、こういう時につまらないなぁ、と思ったりする。
香港からパリ行きの機内では、フランス人の若い男性2人と隣あわせになった。カードにフランス語で記載している時、分からない事項があったので、隣のお兄さんに質問した。それがきっかけで少し話した。
「今回はバカンス？」
「そうですよ。友達がいるので、遊びに」
「パリは初めて？」
「いや、何回か行ったことあります」
「ああ、まぁ、フランス語も話せるしね」
「フランス語は大学の専攻だったし、以前ブザンソンにも住んでいたから。と言っても、日本では全然フランス語を話さないから、かなり忘れたけど」
「でもフランスに行ったら、また思い出すでしょう」
「たぶん・・・そうだといいんだけど」
彼らは香港でバカンスを楽しんでいたらしい。
思いもかけず、早々とフランス語の特訓をされることとなり、少し嬉しかった。
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