カンヌ/モナコ


<最終日は終日自由行動>
2013年6月3日(月)

6泊8日の旅もついに6日目・・・明日は早朝出発なので、今日が観光最終日だ。あっという間に時間は過ぎるものだ。自由行動の日に何処へ行くかは、ギリギリまで決まらなかった。結局、有名どころなのに今回のツアーに入っていなかったカンヌに行き、午後は昨日少ししか滞在出来なかったモナコでタクシー観光することにした。

<懐かしのカンヌ>
大学でフランス語学を専攻していた僕は、1年生の春休みに1ヶ月間カンヌに滞在し語学学校に通った。世界各国から集まって来た同世代の学生たちとの、賑やかな日々!今となっては、16年前、このカンヌに1ヶ月も滞在していたなんて幻だったのではないかと思えてしまう。

カンヌと言えば映画祭。レッドカーペットがある。そして数々のスターの手形。黒澤明監督のものもあった。

16年前、海の見えるレストランで、白ワイン蒸しのムール貝がどっさり乗ったプレートをフライドポテトの付け合わせで食べた記憶がある。そしてそこから、両親宛てにハガキを書いた記憶もおぼろげながらにもある。しかし、そのレストランがどこにあるのかは覚えていない。アイスクリーム屋さんの店員にムール貝が食べられる店を聞くと、親切にもオススメのレストランを教えて貰えたのだが、実際に行ってみると、ムール貝は今の季節はないと言われてしまう。でも、他のレストランにはあったのになぁ。食べてるの見たし。まぁ、無いと言われてしまっては仕方ない。次の機会に取っておこう!

南仏ではオリーブオイルが至る所で売られているので、肌に付けるオリーブオイルを買いたいという母の為にオリーブオイル専門店を探し求め歩く。しかし探し求めなくても、すぐに見つかった。ここならありそう!と思い、店内に入ろうとしたところ、若い女店員が、大声でしかも早口でまくしたてた。
「まだ今日は開いてないの!ゴメンナサイねー!!あと1時間くらいしたらオーケーだからー!!!!!」
開いてないの、あと1時間後にね、って言うが既に開店時間にはなっている・・・フランスではよくあることだ。開店時間よりも遅く開けて、閉店時間よりも早く閉める。そこで、違う店を回る。と、あるにはあるのだが、どうも母が欲するものとは少し違うらしい。やっぱりさっきの店に行かねばならんぞ!

とある店の中で昼寝をしている犬。かわいい・・・ 無防備な寝姿がなんとも言えず可愛い!!

散策は続く・・


<オリーブ女>
昼食後、再度オリーブオイル専門店にトライ!もうあれから1時間以上経っているのだから、さすがに開いているだろうと、ドアに手をかけようとしたその瞬間、我々の背後から「開いてるわヨ〜〜〜ッ!!」と陽気な声を出しながら、先ほどの若い女店員登場!そしてドアを開けながら、
「さっきはごめんなさいね〜。今日は、大掃除の日だったから、開店が遅くなっちゃったの!ウフ」
相変わらず早口でまくし立ててくる。挨拶もそこそこに、早速、オススメの肌用オリーブオイルを訊く。
「それなら、コレがサイッコーよ!」
「コレ?」
「そう、コレコレ。肌に沁み込んでいくったらありゃしないんだから!ちょっと、試してみてチョーだい!ほら手ぇ出して!ほら、あなたも!ほら、どう?ほら、ほら!!・・・ね、どぉぉぉぉぉ?肌に沁みわたってくるのが丸わかりでしょ?」
勿論、母には、この店員が言うことはほぼ全て僕が訳しているのだが、このテンション通りには訳せない。まぁ、その必要もない。必要な箇所が分かればいいのである。母は、確かに店員の言う通り、肌に沁みわたる感触をバリバリ得ているようで、満面の笑みだ。
「コレ最高なのよォー!一番のオススメったらコレなの!!!!!」と、店員がまくし立てたところで、ひとつ質問したくなった。
「で、あなた自身は、このオイルを毎日欠かさず使ってるの?」・・・僕が問うと間髪入れずに店員がまくし立てる。
「あったぼーだわよ、あーた!!!!!!!シャワーの後にこのオイルは欠かせないの!!!私にとっての必需品よ!!!!」
あまりの迫力に僕は一歩後ずさる。そして母に日本語で告げる。
「この女も毎日使ってるって」
この一言で両親が笑い崩れた。ここからが大変だった。このオリーブ女は僕が日本語訳している時間さえももどかしいようで、盛んに商品説明をまくし立ててくる。

「でね、でね、でね、そういうことなら、私、他のものは絶対に勧めないワケ!ね、だってね、これの良さっていうのは・・・」
あまりの迫力に両親は敏感に反応し笑いが止まらない。ホームページからでも買えるのだろうか、という母の質問を訳せば、
「それがホームページでは販売してないのよーーーー!!!!!あ、でもね、ひとつ方法があるわ。アマゾンとかで検索すれば買えるかもしれなくってよ!あ、後で、紙に書いてあげるわね!心配しないで。それでね、さっきも言ったように、他のものは絶対に勧めたくないの。これがイイっていうのもね・・・」
オリーブ女が話し出すと父が「なにがす喋ってるもんだが!(何喋ってるもんだか!)」と言い、両親共々笑うものだから、僕はその笑いにつられてしまうので、オリーブ女のフランス語を集中して聞き取ることが困難になってくる。話半分に聞きながら、適当に相槌を打つ。僕は笑いを堪えるのに必死だ。

「分かりました。あなたも毎日これを使ってて、とにかく超オススメということなんでしょ?じゃあ、これとこれを2本ずつ」
ようやく商談成立。「私も毎晩使ってるから」などと終わらない説明を聞きながら、支払いも済み、商品を受け取ると、
「どうもありがとうございましたッ!!で、コレ、サービスね!入れとくわ☆」
と言って、レジのところに置いてあった石鹸をくれた。
「この石鹸も肌にいいの?」
「当たりマエダのクラッカーよ!この石鹸もサイッコーに肌にいいの!!使ってチョウだい!!また逢いましょう♪」
店を出た後は、母の笑いが止まらず、腹を抱えたまま声にならない笑いが続くので、何がそんなに可笑しかったのかと訊くと、オリーブ女がまくしたてるのもさることながら、オリーブ女が日本語を解さないのをいいことに、僕があっさり「この女も毎日使ってるって」と、本人を目の前にして日本語で言ったことがツボにハマったらしい。しばらくこのオイル(ローション)を使う度に、きっと母はオリーブ女を思い出すことだろう!

今日もちゃんと元気にオリーブオイルを客に売りつけてるかな?!

<再びモナコへ>
モナコの駅は近代的

カンヌを後にし、電車でモナコへと移動している間、さっきまであんなに晴天だったのに雲行きが怪しくなってきた。最終日の最後に雨とは・・・ まぁでも、それまで晴天続きだったし、最後の最後の雨でまぁ良かったとも言える。モナコに着いて、駅のすぐ側にある専用電話でタクシーを呼び出すと、程なくしてやって来た。50代くらいのおじさんで、とても感じが良く、タクシー観光を引き受けてくれた。いい人に当たったようで、街の中の説明を詳しくしてくれる。それをその都度、両親に日本語訳をする。僕がひとりで説明を聞いているだけなら、分からないところでも聞き流すことも出来るが、訳すとなれば、きちんと伝えたい。久しぶりのフランス語シャワーなので、すごい集中力で運転手のフランス語を聞き取る。これはいい特訓だ。しかも、今更ながらに気づいたのは、観光ガイドに数字は欠かせないということ。人口から始まり、国土の面積、モナコ人の人口、モナコ語を話す人口、F1グランプリの距離、モナコとフランスの所得額の違い、などなど、次から次へと数字が飛び出す。とりわけフランス語の数字はややこしいので、数字が大きくなればなるほど、一度では理解できない。極めつけは、現在建設中のビルの高さ、そしてその値段!世界一の高級マンションということで、30億ユーロ・・・?!?!何度も僕が聞き返すので、運転手は運転中にも関わらず、紙に数字を書いてくれた。たった数分の通訳で脳がとろけそうになる・・・しかし久しぶりにいい特訓だ、と思っていたところで写真撮影スポットへ。

狭い国土に人口は増え続けており、いろいろ対策が練られている。海を埋め立てる計画もあるのだとか。10年後には人口25%増だそうだ。

F1ファンにはたまらない?ポールポジションが見える。

昨日は中を見学出来なかったモナコ大公宮殿へ。日本語のイヤホンガイドを無料レンタルして見学。これが、結構面白かった。中に入ったのは僕も初めてだった。タクシーに戻り再びタクシー観光。観光スポットじゃないところも見たい、とリクエストを出したので、観光バスが通らないようなところにも行ってくれた。その間も興味深い解説は続く。約1時間半のタクシー観光、最後はカジノ前で終了。昨日は、カジノさえ通らなかったのだ。夜は正装しないと中には入れないが、昼は観光客も気軽に入ることが出来る。パスポートチェックを受けて中へ。観光だけでなく、ゲームも出来るのである。父が一度スロットをしてカジノ観光は終わり。


カジノの横にある、カフェ・パリで夕食を摂る。泣いても笑っても、この旅最後のディナーだ。隣の席では、モナコ人であろうおばあさんがおひとりで食事をしていた。この店の常連だろうか?優雅でゴージャスできらびやかなモナコの夜は、更けていく・・・。

南フランスの旅 7〜8日目へ

INDEX
1〜2日目 マルセイユ/エクス/アルル
3日目 プロヴァンスの古都めぐり
4日目 コートダジュールの魅力めぐり
5日目 ニース/モナコ/エズ
6日目 カンヌ/モナコ再訪
7〜8日目 ニース〜帰国